第30話

一体何の話をしているのか俺らには分からなくて、ただひたすら大稀が『紗綾を返せ!!』とその男に楯突いたことだけは覚えていた。



しかし大の大人に俺らが敵うはずもなく、男はいとも簡単に大稀を払いのけて、この場を去って行く。





「『塵山』に連れて行け。あそこならばれない。」



「了解しやした。」



幼い紗綾を連れて……あんなに泣きくずれている紗綾を連れて、その男はこの家を出て行く。









「紗綾あああああああああ!!」



大稀は泣き叫ぶ。



たった一人の妹が……今、違うヤツの手に渡っているのだから。





「さ、紗綾……?」



俺も悲しくて、悲しくて、ただ自分がどうなってもいいと心の中で想っているのに、追いかけることすらできない。

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