第43話

仕方なく毎年送られてくる年賀状から住所を確認して、マンションまで向かった。





初めて姉の住んでいる場所を見たけどすごく大きくて、見上げたまま口が塞がらなかった。




来たはいいけど部屋番号も知らないし、どうするかと考えていると、「はなちゃん?」と後ろから話しかけられた。





振り返ると優馬さんがいた。





「あっ、よかった。あの、聞きたいことがあって…」そういうと、「まぁ、取りあえず中に入って。」と言われ、言われるがままにマンションの中に入った。





中は掃除が行き届いていた。




少しだけタバコの匂いがしたけど、きっとこれは姉のものだろう。





「みなみのこと?」優馬さんに聞かれて「それもそうなんですけど…口座に入っていたお金って…」私がそう言うと「あぁ!」と思い出したような顔をした。






「大学を卒業してから何をしてるのかと思ってたら、バイトをしてるって聞いて。留学しておいでよ。才能あるんだから。」サラッと彼はそんなことを言った。





私なんて、才能なんかないのに。





「才能なんてないです。賞も一度しか取れなかったんです。」そう俯くと、「だから、もっと学ぶべきだ。気がついたら遅かった。なんてことにならないように。」と言われた。

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