第84話

服部くんの悲しげな顔。



田中って………



「知ってるよ。俺はずっと一ノ瀬を見てきたからね。今も昔も誰を見て、誰を追いかけてるのか知ってるんだよね。一ノ瀬はどうしたいの?まずは今の旦那さんと話すのが先じゃない?」


「…うん。そうだよね…」


「そしたら俺にもチャンスある?」


「え」



服部くんは私の指先に触れる。


触れ方が優しくてドキドキしてしまった。



「服部くん…?」


「一ノ瀬が誰が好きかは知ってる。今も昔も一ノ瀬は変わらないから…俺は趣味が同じな男友達なのは分かってる。だけどチャンスをくれないかな?」



チャンス……。



「それって……」

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