第48話

「一ノ瀬はどうなの?旦那さんとは」



とっさに錆びた指輪を隠してしまった。



どうって最悪だよ。


そんなこと口にもしたくなくて、唇を噛み締めた。



「俺と似た状況か……」



私はうんもちがうとも言わなかった。



「人生うまく行かないな」



作り笑いをした田中くんをみて涙が出た。



「え、一ノ瀬?」


「違う…私が悪いの。私がいい奥さんじゃないから」



涙が止まらなくなってしまった。


私の心中を察した田中くんは荷物を持って勘定を済ませた。



「田中くん……?」


「出て場所を変えよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る