第91話

反感を買ったら終わり。




それは誰もが知っていることだった。




リカがたまたま彼の家の当主と仲良くしていたことがきっかけで、裕二とは仲良くしていたが、そうではなかったらみんなと同じように恐れていたかもしれない。





リンが学生時代いじめられていた時、彼の名前を出したのはそのためだった。




自分では一時的に抑えることは出来ても、いじめを完璧に止めさせることは難しいと思った。





しかし、裕二の名前を出せば変わってくる。





簡単に言えば、彼に嫌われればこの町から家族、親戚、全てが出ていかなければ行けなくなる。





不甲斐なかった。





「裕二はリンに家の事を知られるのをあまりいいと思ってなかっただろ?なのに何で養子なんて……」





裕二は昔から自分の家のことをリンに知られるのを嫌がっている様だった。





「まぁな…いいことばかりをしているわけではないからな。でも、父親から引き離すには名前を変えて町から出すことが手っ取り早いと思ったんだよ。」





捕まえようと思ったらすぐに、あの父親を捕まえることはできたのかもしれない。





それをしなかったのは、これ以上リンの傷を抉るような真似を裕二はできなかったのだろう。

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