第20話
私はこの時、コウセイがナナワタリ組の凄く偉い人に必死に頭を下げていたのを知らない…。
私を助けだそうとしてくれたことを…。
助けだそうとしても、私の命が危ないから関われずにいた事も…。
繁華街で、ユタカを見かけたことがある。その横には女の人がいた。ホストクラブでも見たことがない女の人だった。
そんなユタカの左手の薬指に指輪がついていた。私はそれを見ても何も感じなかった…。
暫くして、コウセイと再会したのは、偶然なのか奇遇なのか。再び会ったのは、病院の中でだった。
真っ白なベットの上…。
その横には、何故かコウセイがいた。
彼は私の頭を撫でていた。
「………倒れてたらしいよ、お前、ファミレスで」
覚えているのは、24時間営業のファミレスで夜を過ごしていたこと…。
倒れていた。
その原因が分かる私は、目を閉じた…。
「…なんで、コウセイさんが…?」
「…俺はいつもお前のそばにいたよ」
コウセイはいつもそう。
頭を怪我してた時も、現れた。
まるで、私の居場所を分かってるみたいに…。
「そっか…」
「悪かった」
どうしてコウセイが謝るか分からない…。
悪いのはどう考えても私なのに。私が…。ワガママな考えをしていただけ…。
居場所が欲しいために。
──自ら、幸せになるための居場所を手放してしまった…。
ほんとうに、バカでどうしようもない。
窓の外は明るかった。昼間にこうしてコウセイのことを見るのは初めてだった。なんだか変に感じる。コウセイは、日の下でも肌が白く見えた。
「私ね、昨日、店をやめたんだ…」
「…知ってる」
凄く久しぶりに会うのに、なんだか会ったのが昨日のように感じる。
「やめた理由も…?」
「ああ……」
優しく頭を撫でてくるコウセイに、涙が出てくる。
「さわらない方がいいよ…」
「うん…」
「うつるよ……」
同じようなことを言ったことがある。
でも、今回は冗談ではなく本気…。
伝染ってしまう…。
コウセイは私に額に向かって前かがみになり、柔らかく私の額にキスをする…。
「──…いいよ」
一生治らない、命に関わる性病になってしまった私を抱きしめてくるコウセイを…。
あんなに会いたかったコウセイを、もう病気を発症している私が、抱きしめ返すことが出来ない。
「結婚しよう」
あともう、数年の命…。
私はコウセイに、抱かれてはならない……。
コウセイは私にキスをしてくる。
私はずっと、これからもコウセイに謝り続けるのだろう……。
「ごめんね…」と。
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