第10話

────




「マコちゃん、写真指名入ったからよろしくね」


「はい」



〝マコ〟という源氏名は、もちろん偽名。

というよりも、この世界にいる時は〝マコ〟だった。


学校へ行けず友達もいなく、毒親がいる世界の名前とは別々にしたかった。



ユタカに何度か「マコって偽名なんだ」って言おうとした。やっぱり好きな人には本名で呼ばれたかったからか。




この世界で〝マコ〟でいる私は、お店が休みの日ユタカの店に向かった。


その日、私以外のユタカの〝お姫様〟が、100万円ぐらいのお酒を注文していた。


──…10万程のお酒を頼んだ私の席に来たユタカは、手を握ってくれなかった。






寂しい。

ユタカはホスト。

分かってる。

お金を払えば、優しくしてくれる男…。

分かっているのに、ああもっと、稼がなくちゃって思ってしまう…。



私はただ、好きなユタカから、温かみがほしいだけなの。

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