第18話

──────





ワインレッドの髪を持つ、とある女性の恋人は、ぼんやりと頬杖をつきながらテレビを見ていた。

その背後からぎゅう…っと女性が抱きしめれば、男性の「…どうしたん?」と優しいトーンが聞こえ、さらに強く抱きしめたくなる。



「魁輝、何見てるの?」


「ニュース。多分、知ってるやつの名前出てたから」


「え?本当?何かあったの?」


「建物の中におった男が捕まったんやって。昔やから陽向の知らんやつやけど…」


「え!?だ、大丈夫なの?」


「分からん」


「魁輝、なんでそんなに落ち着いてるの?」


「んー…、それでか、って感じやから…」


「それでか?」



訳の分からない事を言う男性に、女性は顔を傾ける。



「俺、ひなちゃん好きやから、異常性癖止まったやん?」


「…え?うん、そうだね」


「中にはそれの逆のやつもいてるねん」


「逆?」


「好きな人にしか、性癖はおこらんやつ」


「え?」


「俺らがメビウスでやってたんは…、情が無かったからこそやから」


「…」


「千尋は、好きになったやつを殺したくなる性癖持ってたから……」




男性にそう言われて、テレビに目を映す女性…。




『──…は「愛しているからこそ殺したかった」と容疑を認めています。警察は恋人殺害として多野千尋容疑者を精神科鑑定をすると共に──…』






「かいき…」


「…ん?」


「私も、まだ、よく分かってないところがあるけど…」


「うん」


「それって、恋人からしてみれば、殺された瞬間が1番愛されてるってこと?」




そう言って、魁輝という男性を見つめれば、男性は「──…そうやな」と、テレビを消す。




「人の愛は重いから」

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