第71話
だからこそ、晴陽が憎かった。
晴陽が暴走族に入り、ナナも晴陽を追うようにそこへ入った。それは高校に入ってすぐだった。
俺の方がナナと仲がいいはずなのに。
何故かナナと晴陽の方が仲良く見え。
ずっと苛立っていた。
俺の方がナナの事をよく知っているのに──…。
晴陽が暴走族に誘った流雨は、ナナの事を嫌っていた。ナナを辞めさせようとする。それなのにナナはやめない。
ずっと晴陽に従っていた。
そんなナナは、俺に言う。「晴陽の言うことは従え」と。俺はそれに従った。「晴陽が言うなら」ってずっと、ナナの言う通りに。
晴陽が総長になり、ナナがその〝役職〟についたとき、もう我慢できなかった。
まるでナナは晴陽はコマ。
晴陽の言いなりになっているナナを助けてあげたかった。
だから、──…そいつと手を組んだ。
遊佐雷蔵。
俺はこの族を潰したかった。
ナナを、何らかの理由でナナをコマのようにあつかってる晴陽が所属している、この暴走族を潰せばナナを助けられると思った。
遊佐と手を組み、女を拉致った。
バカをした暴走族のせいで、警察の目の光が強くなり。そう言った素性の女を選ばなければならなかった。
親が放任主義で、あまり親しい知り合いがいない、静かな女の子。
作戦では、流雨に女を痛みつけてもらう予定だった──…。
それなのに流雨が、女を気に入った。
そこで作戦が狂った。
本来ならば、流雨が女を傷つけ、
──…流雨が警察に捕まり、
捕まったことにより、族を潰す予定だったのに。
あの女が、あの女のせいで──…
流雨をもう一度女に敵意を向けるために、流雨のザリガニを殺した。
流雨は怒っていた。
そしたら流雨は女を痛みつけていた。
これで上手くいく、と、思っていたのに。
今度は晴陽が女を気に入ったから、もう俺の手でなんとかしなきゃいけないと思った。
俺が、この手で、
病院に連れていかなければならないほどに。
殺せば、いい。
ナナを助けるためなら、人殺しなんか、造作もない。
もう石はいらない。
だってもう素手で、殺せる。
首を絞めれば。
そしてそこを…その部分を、分からないように焼くだけでいい…。
全てはナナを、救うために。
晴陽から救うために。
大好きな、ナナのために──…。
もう晴陽のコマになる必要は、ないと。
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