第91話
辰巳さんの彼女と出かけてなかった?
「あの人は?」
「誰?」
「この前一緒にいた女の子」
どうしても辰巳さんの彼女って言えなかった。弟である奈央に言えば、認めちゃう気がして。
名前も知ってるくせに。
「ああ、美優?」
「··········」
「あれは一緒に選んでっていわれて、付き合っただけ」
「選ぶ?」
「もうすぐ兄ちゃんの誕生日だから」
そういえば、小さい紙袋を持っていた。
辰巳さんの誕生日·····。
あれは辰巳さんの誕生日プレゼント·····。
「·····そうだったんだ」
もうこれからは、たまり場にいる人以外でも祝ってくれる人がいるということ。
「·····ねぇ」
「ん?」
「辰巳さんの彼女って、どんな人?」
それは、あたしが1番知りたくて、知りたくなかったこと。
聞いて後悔する。
奈央に聞いてしまったのは、間違いだったかもしれないと。
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