第88話
家の外に出るまで、薫の顔を見ることが出来なかった。というより振り向くことが出来なかった。涙で目が霞んで。
おばあちゃんたち以外で、初めて関わりを持った人。私に優しくしてくれた人。薫のことは嫌いじゃなかった。正直「好き」と言ってくれて嬉しかった。
だけど付き合えない。
一緒にいれない。
もうとっくに、優しくしてくれた薫に惹かれているというのに。私も好きだと言いたかった。だけど震える私の体がそれを許してくれない。
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