第63話

「重くない?」


「全然」


「ホント?」


「本当」


私を後ろに乗せ、ペダルを漕ぐ薫の足はスムーズに動いている。「気ぃ使うなって」と前を見ながら言う薫。



初めて自転車に乗った時は、「この人誰?」が頭の半分をしめていたから。もう薫という人物がどんな人か分かったから、こうして重くない?と聞くことが出来る。普通に話すことができる。



「そういえば」


「なに?」


「クラスの人に、バイク教えてくれって言われた」


「明日香に?」


「違うよ。薫に伝言」



私、バイクなんて持ってないし。

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