第12話
「うん、結構朝は人が多いけど、慣れてきたら普通だよ。こんなもんかって感じで」
人が多すぎて乗りたくない時もあるけれど。
そういう時は今日みたいにベンチで次のバスが来るまで待っているから。
「───そういえば、この前薫君を見かけたな」
魚に箸をのばそうとした時、テレビの方を見るために顔の位置を動かしたおじいちゃんが思い出したように呟いた。
薫君?
「ああ、薫ちゃんね、また一段と男らしくなったわよねぇ」
薫ちゃん?
おじいちゃんとおばあちゃんの話題の中に出てきた『薫』。それってやっぱり···あの人だよね。
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