第9話
いったい何故?
「ついたぞ」
そう言われてついたのは、今、自分が住んでいる家だった。表札の文字は「川瀬」。ここはおばあちゃんとおじいちゃんの家。
ついてから気づく。
私、家の場所を言っていない。
だから薫が知っているのこと自体おかしい事なのに。
送ってくれてありがとうも、
どうして家を知ってるの?も、
私の口から出ることなく、「ついたぞ」から何も言わなくなった薫は、私の鞄を渡してきて本当に急いでいるのかサドルをこぎ来た道を戻って行った。
男らしい広い背中を見ながら、あの人は誰だったのだろうかと、頭の9割はそんな疑問だった。
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