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第90話
『──…もしもし』
流雨の話を聞いて真っ先に思い浮かんだのは、晴陽が言った事だった。
晴陽は確かに、私との会話の後に煙草を吸っていた。誰かを殺したい、あれは、本心なのかと。
電話の向こうの人は男の人だった。
全く知らない。
晴陽でもない、流雨でもない、柚李でもない。
どちらかというと、御幸の声のトーンに似ていたような気がして。
時刻は日付をまたいだ真夜中。
家の中は見張りがいないから。
『──…もしもし?』
なにも喋らない私に、その人の声が低くなった。
「…下足箱に、」
『え、?』
「この番号が…」
『…もしかして、〝姫〟?』
驚くその人は、『ほんとうに?』と疑ってくるけど。特に証拠もない私は、「晴陽のこと…教えて…」という。
「あなたはだれ?」
私の質問に、彼は自分の名前を口にする。名前を聞いて慌てて切ろうとした私に、その人は、止める。
『待て、切らないでくれ』と。
彼との会話はありえないことばかりだった。
『晴陽とは、親友なんだ…』
『疑うなら、松山小学校の早川晴陽を調べてみて。そこに俺もいるから』
『疑いが晴れたら、また連絡して欲しい』
そう言った彼との通話は終わった。
5分もない電話。
戸惑いが隠せない私は、暫くその番号を見つめていたような気がする。
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