第6話
ラジオを終えて、時計を見ると夜の12時を回っていた。明日は、次のコンサートのリハだ。あ、もう今日か…。
コンサートの前はいつも気分が高ぶるのに、今はとても落ちている。理由は分かってる。
柚があの時のことを憶えていないかもしれないから。
マネージャーが運転する車の後部座席、隣に座っている柚は今クールのドラマの台本を読んでいる。真剣な横顔をぼぅっと見つめる。
「ふふ、優ちゃん、そんなに見つめられたら照れちゃうよ」
視線に気付いたのか、そう言ってふわっと笑う柚。この笑顔が俺は好きだ。
「あれ?どうしたの、拗ねてる?」
「…覚えてないの??」
子供みたいだ、こんなの。もう昔のこと。子供の頃の話なのに。それでも柚は覚えててくれてるって何故か思い込んでた。
「なにが??」
「…覚えてないならいい」
そういって、窓の外を見る。
あぁ、これじゃあ駄々をこねてる子供だ。
まず柚の家に向かうこの車は、先程住宅街に入ったらしく、無機質な建物が整然と並んでいた。世界から色がなくなってくみたいだ。
「優ちゃんのバカ」
首を傾げて柚の方を見ると、ふわっと笑った柚がこっちを見つめていた。
「覚えてないわけないじゃん。でもあれは…優ちゃんから貰ったあの言葉は、私だけの宝物だから誰にも教えてあげないの。そっちこそ、覚えててくれたんだね」
優希「覚えてるに決まってんじゃん…俺がどれだけ…」
その先はやっぱり言えなくて。
気まずくなって、外を見る。
「あ、ローソンある!!カフェラテ買ってもいい?!」
「柚、ほんと好きだな〜」
ローソンのあかりが眩しく光っている。
柚のその一言でこんなに世界が明るくなる。
柚がいるだけで世界に色がついたみたいに綺麗に見える。
だから俺は…。
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