第496話

「誕生日はいつだ?」


耳元で声出さないで、ゾクッとしたじゃないのよ。



「4月11日よ」


「...過ぎてんのかよ」


いやいや、怒られても...。


誕生日は紅葉達に会う前だったし



 

「紅葉は?」


不機嫌な紅葉を誤魔化そうと聞いてみる。


聞かれて聞かないのも悪い気がするしね。




「...3月3日」


ぶっきらぼうに言い放つ紅葉に、


「女の子の日じゃない」


と言ったら、


「うぜぇ」


と返された。



多分、何度も言われてきたんだろうね?ひな祭りだって。




「フフ...帝王様がひな祭り産まれとか可愛いわね」


と口元に手を当てて笑ったら、



「良い度胸だ」


ともう片方の手を窓について、窓と紅葉に囲まれて逃げられなくなった。


背中に密着する紅葉の胸板は、スーツ越しでも筋肉質なのが伝わってくる。



ヤバい...ドキドキが加速する。


本当、勘弁して。



「...っ...」


「暁...」


だから、耳元で話すな。


寒さとは違うゾクゾクが背中から首まで這い上がる。




「...なっ、なによ」


「...耳赤くねぇか?」


「あ、赤くなんてないわよ」


普通そこは無視するところでしょ。



「そうか?脈拍も上がってるよな?」


嬉しそうに口角を上げる紅葉。



密着してるから私のドキドキが伝わってるんだ。



「あ、上がってない」


だけど、認めてなんてやんない。


ここで認めたら食べられちゃう気がするのよ。



「ククク...相変わらず気が強えぇな?」


「う...煩いし」


「まぁ良い。暁、お前のお陰で俺の楔(クサビ)は無くなった。だから、もう遠慮はしねぇ」


「...っ..」


「お前も楔を理由に前みたいに俺を拒否することも出来ねぇよな?」


普段口数が少ないくせに、こんな時だけ饒舌になるなんて卑怯よ。



「.....」


ガラス越しに紅葉と目が合う。


その瞳は獲物を狙う野獣のそれで、身体は金縛りにあったみたいに動かなくなる。


合った目さえ動かすことが出来なくて。




「暁...俺はお前が好きだ」


ハッキリと告げられた思いに心のバロメーターはレッドゾーンまで振り切れた。



紅葉は私をキュン死させるつもり?



「...っ..」


紅葉にこんなに真っ直ぐな気持ちを向けられるのは初めてだ。


今までは似たようなニュアンスの言葉はあったけど。



悔しいけど...胸の奥から温かい何かが競り上がってくる。

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