王様の受付係

第76話

「お金は持ってる人間が使わないと、経済回らないしね」

「はぁ···まぁ、そうですけど」

もっともらしい事を言ったキングに曖昧に頷く。

こう言う所は社長って感じなんだよね、キングって。

「それに、瞳依ちゃんに使うお金は全く惜しくないからね。一杯甘やかしてあげる」

「...」

ドヤ顔でそんなこと言われても、どう反応していいのか困る。

「あれ？　瞳依ちゃん顔赤くない？」

「何でもないですよ」

赤くなった頬を隠すようにそっぽを向いた。

時々、キングはツボをついてくる。

あんな事をに言われたら、嬉しくないわけ無いじゃん。

キングの言葉に反応してしまった事が、ちょっと悔しかった。

「瞳依ちゃんは可愛いな」

キングは嬉しそうな顔で大きく広げ両腕で抱き締めてくる。

その瞬間にふわりと私を包んだキングの纏う香水の匂いにドキッと胸が跳ねた。

な、な、なに？　これ。

「ちょ、急に抱きつかないでくださいよ」

恥ずかしさを隠し、両手でキングの胸を押す。

「無理。瞳依ちゃんて柔らかいなぁ。それに良い匂いする」

クンクンと髪の匂いを嗅ぐのやめて〜。

三村さん、この変態を何とかしてください。

その祈りを込めて対面のソファーに座る三村さんを見れば、呆れ顔で左右に首を振った。

いやいや、諦めないで助けてください。

「瞳依ちゃん、俺の腕の中にすっぽり入って可愛い」

「ど、どうせチビっ子ですよ」

「いやいや、ある一部はチビっ子じゃないでしょ」

やや俯き加減になったキングの目の先は、私の胸元。

「へ、変態！　セクハラ反対です」

ジタバタもがいた。

この人、いったいどこを見てるんだ！

「はいはい。いい子だから落ち着いて」

ポンポンと背中を叩かれる。

だから、私子供じゃないからね。

「落ち着きましたから、離れてください」

「え〜」

「え〜じゃないですよ」

「どうしても？」

「どうしてもです」

「仕方ないな。今だけだよ、逃してあげるのは」

意味深な言葉を吐いて私を解放したキングと、急いで距離を取る。

「そんな離れちゃ寂しいでしょう」

「まったく、これっぽっちも寂しくありません」

指先で狭い幅を作ってみせる。

「ククク、瞳依ちゃんはやっぱりいいなぁ。よし、ドレス選びが出来なかった分、俺がピッタリのアクセサリー見つけてあげるね」

そんな気遣いいらないよ

キングは宣言通りに、この後店長が厳選して持ってきた高級貴金属の中から、私が白目を向いて卒倒しそうな値段物を惜しみなく買い付けたのだった。

どうしてこうなった···。

誰か教えて。