第76話

倒れこんだはずなのに、痛みも衝撃も来る事は無かった。





その代わりに、ポフッと柔らかい感触と暖かさに包まれた。






「えっ?」




驚いて顔を上げた瞬間、私の視界に入ったのは赤い髪。







あ~やばそうな奴にぶつかっちゃったみたい。







逃げなきゃ、と思うのに、赤い髪の人の胸に体を預けたまま動けずに居た。







「・・・・た・・・すけて。」



上がった息で吐き出せた言葉。





限界だった私は、そのまま視界がフェードアウトして行く。






背中に回る優しい手の感触と、『銀狼』と言う周りのざわめきを聞きながら、意識を手放した。









琥珀・・・・・逃げれなかった・・・よ。







つむった目から流れ落ちた涙。









それを、赤髪の彼が優しく指で拭ってくれていた事なんて、私は知るよしもなかった。







これが猛と私の初対面。

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