第56話

将輝派みたいに…。



「もし、亜貴さんが私を襲えって倭に命令したら、倭はそれに従うの?」



倭は険しい顔をしたまま。



「倭…」


「しねぇよ、するはずない」


「…じゃあ私以外の子は?」


「…その」


「私以外だったら?」


「…」


「倭は誰にでも、恐怖を与える人間になるの?」


「お前、…」


「…お願いだから、ならないでよ…」



思わず、足を止めれば。

倭も足を止めた。



「清光で1番になりたいってことは、みんなを支配したいってことでしょう」


「その…」


「倭は1番になって、何がしたいの?」


「…」


「穂高を支配したいの?」


「…」


「倭…」


「…」


「そんなに、穂高が嫌い?」


「違う、俺がここに入ったのに晃貴は関係ない」


「じゃあなんで?」


「言っただろ、お前が大事だから」



大事だから?

私が、大事だから…?


私のことを、好きだから?



「…大事って、なんで? なんで清光高校に入ったことに繋がるの?」


「うん」


「倭が清光高校に入ることで、私を大事にできるの?」


「今はできない」



今は?



「奏乃」



倭の手が、私に伸びてきて。

前髪を軽くさすられた私は、倭を見つめた。



「お前はいつも、俺に言わないだろ?」



いつも言わない?

なにが?



「中学ん時、虐められてたことも」



虐められてたこと…。



「お前が晃貴を好きなら、付き合えばいいって思ってた。なんで俺に本当のこと言わないんだって」



本当のこと…。

私が好きなのは、倭だよ。



「お前で遊んだ晃貴を殺したいとか、思ってないわけじゃない。でもお前が晃貴のことを好きなら、俺は晃貴に手を出さない」


「…」


「晃貴…あいつは、女関係悪いし、その事でお前にも変なやつが近づいて、またお前が虐められるかもしれない」


「…倭」


「でも、お前のバックに、清光高校の頭イってるやつが絡んでるって分かれば、お前を虐めるやつはいないだろうから」



私のバック…

清光高校…。

言ってる人物が倭の事だと、すぐに分かり。



「じゃあ倭は、私がもう虐められないために、清光高校に入ったの?」

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