第13話

その声に安心して、泣きそうになるほどだった。



「あ、あの、うちの娘が何か?」



その人から私を隠すようにしてくれたお母さんは、その人に声をかける。


私はお母さんの背中でガクガクと震えていて。



「その子がぶつかってきたんスよ」



その人の言葉に、お母さんは「そ、そうでしたか。すみません⋯。服を汚しましたか? クリーニング代を⋯」と、私を庇ってくれて。



「いいっすよ、水みたいだし」



その人はそう言うと、私とお母さん横を通り過ぎ、持っていたグラスの中に水を入れる。



まるで何事も無かったかのように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る