はじまり

第2話

港川九瑠璃達の学校は夏休みに入っていた。

坂木結衣が才田廻子(めぐりね)へ預け、更に廻子から石の専門家である山部大河へ預けられた赤く光る石について廻子から何回か説明されたが、廻子も結衣も文系の為、結衣からの質問に廻子が答えられず、また廻子自体にも疑問が残る形となっていた。

山部が会えば済んだ話だが、彼は彼で石の疑問点について調べたいという想いから、廻子に電話で報告するだけに留めるまでに熱中していた。

研究者とはこういうものかと廻子と結衣は山部の熱が落ち着くのを待ちながら、彼女達も二人で考察をしていった。

結衣からすればお婆ちゃんの言葉から、時間などないと思いつつも待つしかなかった。

そもそも手元に無いので動きようが無い。

九瑠璃に気づかれないようにするのは簡単だった。

彼女はあれ以降吹っ切れたように授業をこなし、将門君ともデートを重ね。

また鞍馬盾子(くらまじゅんこ)にいじられ、それを間に受けたりもしながら彼女らしい時間を過ごしているように見えた。

結衣自身は九瑠璃に引っ張られる形でこの2ヶ月少々を過ごす形になっていた。

それでついにやれる事が無くなったらしく、山部の研究をしている場に才田さんと私が呼ばれる形となった。

才田さんの恋人で山部さんの友達である結城さんは時間が合わず今回は断念。

才田さんはあの二人が揃うと話が横道に逸れるから丁度良かったと電話越しに笑っていた。

私は山部さんと会うのは初めてであるが、才田さんの話からすると、結城さんと似た者同士という事らしい。

結城さんとは廻子さんや九瑠璃ともバーベキューを一緒にしたが、結城さんへのイメージは理路整然としていて冷静なイメージだったので、話の収まりが悪くなるという廻子さんの言葉から少し混乱しつつ、学生時代はそうだったのかもしれないと思いとどめ廻子さんとの待ち合わせ場所に向かっていた。

この事は九瑠璃には相変わらず言っていないし、今の彼女は推論を私に向ける事もない。

状況としては理想的だった。

翔音ばあちゃんが何の為に残した言葉なのか

あの石の意味と状況に科学的根拠がどの程度立証されたのか、私もばあちゃんの言葉をどう捉えるべきかというのを何度も考えたが、私の想いに応える結果も過程も今まで起こらなかったように視えてしまっている。

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