第52話

その時イズミが顔を上げて、俺と視線を合わせた。




その目を見て…

諦めた。




絶望した目だった。

俺が庇えば庇うほど

それはどんどん酷くなり。




こんな状態まで追い詰めた杉浦に。




なにより巻き込んでしまった俺自身に苛立ちしか起こらなかった。




失せろとイズミに言いながらも、その小さな背中が部屋から出る瞬間、名前を呼んでいた。




自分でも驚くほど小さく弱々しい声で。




イズミに聞こえたかどうかはわからない。アイツは振り向かずに部屋を出て行った。

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