第30話

「あのごたごたの直後にさ、急に思い立って二人で温泉旅行に行ったじゃん。あの時に…」


「…ん?…………あーっ!あれかっ!」



そう言うと、璃咲は大爆笑。

んもーーっ!失礼にも程があるよっ!



「あははははは!あれね、あれ。ナイトくん失踪事件ねっ!」


「…笑い事じゃないんだからー。20年近い付き合いだったんだよー」



物心がつくかつかないか、そのくらい小さい頃。

どこか地方の遊園地に行った時、お父さんが買ってくれた騎士のお人形。


なんだかとにかく気に入ってしまって、ベッドのすぐ横のメタルラックの上の方、部屋を見渡せる特等席に、いつも置いていたんだ。


肌身離さず…とは言わないけど、たまに持ってお出かけもしていたし、泊まりの旅行に行く時には置いていく気になれず、お守りみたいな感じで必ず持っていっていたのに。

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