第7話
少年は自室の厨房で菓子を作りながら、拗ねていた。
全魔力の付与を希望したのに、魔国の医者は二割程度しか使ってくれなかった。
昔から話のわかる先生だと思っていたのだが……。
――これなら僕、まだまだできるよ……。
歯を全て抜かれている彼女に食べてもらうため、果物を裏ごしして固め、魔力で冷やす。
ついでにプリンも作った。
全て――少年の魔力が籠もっている。
「お待たせ。アドア」
いつも頭の固い侍女長も、最後の見送りと聞いて素直に人払いに応じてくれた。
ここには、少年の寝台に横たわる彼女と、少年自身しか居ない。
豪華な調度品などはなく、花が所狭しと飾られた部屋で、二人きりだ。
彼女は、魔国の医者の魔力付与措置のおかげか、ぼんやりとだが意識を保っていた。
笑顔でジュレとプリンを差し出し、
「君の為に作ったよ。食べて」
寝台の上で食事できるよう持って来たテーブルに置く。
彼女は言われるままにジュレをスプーンですくい、食べ始める。
と、ジュレだけで食べるのをやめた。
「どうしたの? プリン苦手?」
ややあって、彼女はプリンをスプーンですくい、少年の口元にもってくる。
――そうか、奴隷だった……。
「僕はいいんだよ。ほら、食べて」
少年は言って、彼女からスプーンを取り上げると、少年が彼女の口にプリンを運んだ。
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