別れられない女

第197話

目に移るものには確かに色があるはず。


なのに、なぜか色のない世界。


「――」


耳には確かに音が流れ込んできているはず。


けれどなにも聞こえない。


「――、――。…ナ?マナ!!!!」


「………え?」


色も音もないはずの世界に、突然現れたのは、


「見つけた!!どこ行ってたのよー」


ふわりとなびく長い黒髪。


ほんの少し不貞腐れたように頬を膨らませているその下にある、紅い唇。


よく通る高い声。

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