第83話

「…広川」


コウキがタクミの名前を呼ぶ低い声が耳に響いて、握っていた手に自然と力が入る。


コウキはなにをするつもりなんだろう。


なにを言うつもりなんだろう。


心臓はドクドクと早鐘のように鳴り響き、あまりの緊張感に、喉の奥から吐き気が襲ってきそうな感覚になる。



「……なんだよ」


不貞腐れたように答えるタクミ。


そのとたんに、コウキにグイッと手を引っ張られてさらにあたしを引き寄せる。

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