第78話

「素直で結構」


そう言って、慣れた手つきで私の携帯を弄り出す。



あの不良校では珍しい程よく着崩された制服。


スラッとした長い脚を持て余しつつ、自分のバイクに寄りかかったまま数分。



「ほら」


ポイッと私の手の中に入るように器用に投げて私に携帯を返す。



携帯を開けば知らない番号がひとつ。


「それ俺の番号」

ねみっ、と小さく欠伸を零す。



「゛危ない゛ってどうしようもなくなる前に連絡してこいよ」


……だから私は餓鬼じゃないっつーの。


「それか、」



まだなんかあんの。


ひらりと軽々バイクに跨り、エンジンをかける。


「夜寂しいから相手して、って誘いの時でもいいぞ」



「シネ」


ド変態。



バイクのエンジン音がボルテージに達し、奴はヘルメットの上からでも分かるぐらいに喉を鳴らしているのが分かった。

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