第51話

「広川、お前、どの面下げて本気だとかぬかしてんだっ。

マナと付き合ってたときのお前はマナを泣かせてばっかりだったじゃねぇか!」


コウキの振り上げた拳が、タクミの頬に一直線に向かう。


「コウキ!やめっ…」


思わず、悲鳴にも似た叫びをあげて、その怖さにギュッと目を瞑る。




「っ……――」


だけど、あたしの耳にはなんの音も聴こえてこない。

恐る恐る固く閉じていた瞼を開いてみた。

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