動揺する男

第35話

「おはよ」


「……」


「行こっか、マナ」


「……」


そうだった。


忘れてたわけじゃないけど、昨夜はママの話にそれどころじゃなくなって。


朝にはすっかり頭になかった。



「…本気、だったんだ」


「ん?なにが?」


「…迎えに…行くって…」


「ああ、まあね」


フッと口角を軽く上げたタクミは、それから当然のように手を差し出してくる。

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