第48話

先輩が控え室に入っていったのを見届けて、わたしは体育館を出た。


忘れ物のことも頭になかった。


ただ、先輩の涙だけが頭の中を支配した。


誰も知らない先輩の真実。



自転車置き場までどうやってたどり着いたのかさえ、記憶になかった。


無意識に鍵を開け、自転車を押していた。


校門に着いたとき、


「未来!?」


名前を呼ばれて、初めてハッと意識を取り戻したような感覚だった。

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