第9章

第63話

「彩瀬さん、ありがとうございました。

続きまして、何か質問等ありましたら、挙手をお願い致します」



「はい」



一人の記者が手を挙げた。



「どうぞ」



「彩瀬さんは、息を呑む程美しい風景画や、植物の絵を多数、描いてきていますが…今後、人物画を描く予定はないのでしょうか」



その質問に、数秒の沈黙が続いた。



「…人物画は描いていますが…公の場で発表する予定は、ありません」


会場は一気に、ざわついた。



「それは…何故なのでしょうか?」



「私の中だけに留めておきたい…からです」



記者も、これ以上踏み込んではいけない「何か」を感じ取ったのか、これ以上の事は何も聞かなかった。

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