第4話
「お願い!聖歌!」
私がいつものように、放課後、マネキンでヘアアレンジの練習をしているとクラスメートの由香が顔の前に両手を合わせて頼み込んできた
「今日のクリスマスパーティーに来て!来るはずだった子が急にバイトが入っちゃって、女子の人数が足りなくなって困ってるの!」
私達、美容師の専門学校生は美容院でバイトをしている子がかなり多い
美容院は12月が忙しい時期だ
なので、他の月に比べて休みは取りにくくなる上に、今日のようなクリスマスイブともなれば休みを取れている子は皆無といっても良いだろう
もし、休みを取れていたとしても、いきなりバイトが入ったりする事もあるだろう
そんな中、私は幸か不幸か偶然にもバイトが休みだった
でも、私は、あまりそのパーティーに行く気にはならなかった
由香が言う『クリスマスパーティー』と言うのが、クリスマスパーティーとは名ばかりで、本当はクリスマスパーティーという名の合コンだという事を知っていたからだ
もし、そうでないなら、何故、男女比を同じにする必要があるだろう
ましてや、女子が一人来れなくなったからって、別の人間を誘ってまで
私は恋愛に興味はなかった
そんな事をしている暇があったら、少しでも多く髪に触り、ヘアメイクアーティストの夢に近付きたかった
そんな私の考えを見抜いたようで、由香は更に頼んできた
「お願い!今日、バイト休みで、フリーな子、聖歌しかいないの!」
…やっぱり
…フリーな子を集めるという事は思った通りだ
「ね!蘭も来るからさ!」
「…蘭」
蘭というのは私の幼なじみの男子だ
親同士が仲が良くて、物心ついた頃からいつも一緒にいた気がする
今は私達も成長したので、昔ほど一緒には居なくなったが、それでも、高校は違うものの、小学校、中学校は一緒だったし、今の専門学校でも一緒だ
「…分かったよ」
私は由香の頼みを快諾した
確かに男子には興味がないけど、ここまで頼み込んできている由香のお願いを断る程の理由にはならなかった
どうせ家に帰っても、両親とも仕事で帰りが遅いので暇だし、それに例え、男子に興味がないとはいえ、クリスマスイブを一人きりで過ごすのも虚しいと思った
だから、ほんの暇潰しのつもりで出てみよう
そう思った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます