第19話

「五十鈴ちゃん、大丈夫?立てる?」



「……何で、お前がここにいるんだよ。荒田」



見回り、とは思えない。完全に私服だから。




「俺、五十鈴ちゃんのヒーローだからいつでもどこでも側にいるよ」



「…………」



「あ、あれ?ここで罵倒する五十鈴ちゃんを想像してたんだけど……」



そうだ。いつもなら彼を罵倒するか無言で去るか、何かしら彼を拒否する言動を起こすはずだ。……はず、なのに。体が動かない。



彼が来てくれて、よかったと思ってる。




私は無意識にしゃがみこんでいる彼の首の後ろに腕を回して抱き着いた。私の行動に一瞬怯んだのが分かったけど、離さない。



安心したんだ。この男が来てくれて。あのままでは死んだか、犯されたか、屈辱をあわされそうになったから。誰かをこんなに求めたことはない。




「怖かった…」



「五十鈴ちゃん…」



「すっごい怖かった。死ぬんじゃないかと思って、怖かった。来てくれて、ありがとう。荒田」



強く、強く抱きしめる。

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