第5話

「有田(ありた)ぁぁ!!てめえ、また学校行かなかったのか!?」



「げ!!島津(しまづ)だ!!全員、散らばれ!!」



志帆の声に反応して、全員が別々の方向に逃げ始めた。こういう時は同じ方向に逃げるよりも、散らばって人混みに紛れ込んだ方が撒ける。しかし、島津がロックオンしているのは私であって、追いかけてくるのも私。ここはあえて囮になるために、わざと人通りの少ない路地裏を選ぶ。



それに私があの中でも一番足が速い。誰かを撒くとしても、可能性が高い私がこういう仕事をすることが暗黙の了解だった。それに島津は年齢的に体力が低い中年だ。撒くのにそんなに時間はかからなかった。








「毎回毎回、サツも大変だなぁ」



上がった息を整えながら、周りを見渡す。島津の姿はなく、息をついた。



誰かと合流しようかと思ったが、今日は別行動した方が賢明かと思い直した。島津の野郎、今日は見回りの時間が早かった。もしかしたら、他にもサツが回っている可能性もある。



目立つ自分がいるのも気が引け、とりあえずどこへ行こうかと人通りの多い国道へ出たその瞬間、見たくもない男を発見してしまった。




「ったく、また学校サボりやがって……」



「ちぇー、何よー」



「不貞腐れるところじゃねえよ。ほら、荒田からも言ってやれ」



同僚であろう男の隣にいる男、荒田。“あの”荒田だ。またうざいテンションで絡むのだろう。捕まった奴らに同情しつつ、静かに荒田を見つめていた。



少し間が空いたため、珍しいと思ったが―――…次に出てきた言葉に驚愕した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る