ブラッド・ホーク~復讐の名と言う血に染まった鷹の復讐譚~

佐々牙嵯峨兎

1章 黎明と絶望の首狩り〈ヘッドハンター〉

黎明1 日本の転生と首狩り〈ヘッドハンター〉

 2026年の春。突如日本は異世界に転生した。

 異世界に存在するドラゴンやエルフが現れた事に驚いた。

 しかし日本が転生した夜に悪魔が蠢く世界に繋がる扉・獄門ゲヘナ・ゲートが開き、日本は近くの国・武装国家エルドラと共に獄門ゲヘナ・ゲートと悪魔を打ち倒し、日本はエルドラと同盟を組んだ。

 日本が異世界に転生した事や悪魔が出現した事件は天魔大戦として語り継ぎ、平穏の時代が迎え入れる。

 ――しかし数年後、一人の少女が平和を打ち砕かれた。

 少女は悪魔を信仰する組織・〈悪信教団デミウルゴス〉を設立し、天魔大戦で出来た悪魔の亡骸を元にした武器・魔神兵器アーク・ウェポンを生み出し、世界をまた混沌に陥れる。

 世界は魔神兵器アーク・ウェポンを元にした対抗兵器・処刑兵器デス・ウェポンとブラッド・ホークを生み出して対抗する。

 そうして約二百年の時が流れ、いずれどちらも消滅していなかった……。





 ▲▽▲▽▲▽





 その中でエルドラの国境付近にある街ラ・レンテムのサンクローバー教会にとてつもない爆発音が響く。

 教会の鐘はへし折られ、天使や神を美しく描かれているステンドグラスが割られ、聖母マリアの像が砕かれている。

 その惨状の中で聖堂にある祭壇の後ろに隠れている少女が顔を出しながら呟く。


「な、何なのこれ……?」


 少女は今起きている状況に信じられずに呟きながら頭を抱える。

 少女の姿は黄金のロング、目つきは少し丸目のサブマリン、体格は細めに見える。顔を作りはとてもよく、可愛さの中に凛とした美しさがある。

 蒼のスカートと麻布のシャツ、手には高価そうなブレスレットを着け、革のロングブーツを履いている。

 しかし少女は少し涙目になりながら爆発音の中心を見る。

 そこにいるのは二人の男で、片方は少し大人しそうな青年、もう片方は人と呼ぶべきかは分からない男がいる。

 青年の姿は体格が細く、顔だけ黒のフードを深くかぶっているのと、今夜が曇りのため光が入らずに分からない。

 黒のフード付きのロングコート、指の部分がない手袋をはめ、黒い革のブーツを履いている。

 逆に男の姿は一言でいえば異形の怪物であった。顔つきは馬その物であり、背中にクジャクのような鮮やかな羽毛が生え、手は鉄製の蹄をしている。

 鮮やかなコートを着ており、煌びやかな腕輪、そして一番目に映るのは様々な装飾を施されているが禍々しい王冠だ。

 青年は悠々と鉄の片手剣を構えながら、自分の前に立つ男に質問する。


「おい、その武器はどこで手に入れたんだ? 大人しく情報を言ったら破壊だけにするぞ?」


 目の前に立つ男は青年の悠々とした態度に青筋を立てながら首を傾げる。


「破壊だけ許する? なめるな、何も知らないガキが! この武器・青銅之王冠アドラメレクを捨てるなんて無理に決まっているだろ!」


 男は叫びながら背後から黒のスーツを着た怪人を召喚する。

 その怪人は黒のスーツを着ており、黒と白の混ざった帽子をかぶっている。だが肌はとても黒く、表情は子どもの落書きのような真っ黒い黒丸の目が二つと口が一つある。

 男は狂気的な笑みをしながら叫んで言う。


「これならどうだ! お前みたいなガキを容易く殺せる使い魔ファミリアの前だと無理だろうなぁ! と言うわけでこのガキを殺せ!」


 男は獰猛な笑みを浮かびながら使い魔ファミリアに命令する。

 使い魔ファミリア達は男の命令を受け入れて魔力から各々の武器を錬成する。その武器は片手剣や槍、斧や棍棒を生み出して構える。

 青年は少し呆れながら言う。


「いつも聞いているけど、やっぱりそうなるか……」


 青年はそう言いながら黒フードを外す。

 その素顔は漆黒のショートの上に白銀のメッシュで、目つきは少し垂れたクリムゾンだ。しかし右目は黒が主軸で白のクロスの眼帯を着けている。

 青年が黒フードを外すと使い魔ファミリア達は武器を構えながら襲いかかる。

 使い魔ファミリア達が武器をぎらつかせながら襲いかかるのに、青年は冷静そうに右腕を構えて詠唱する。


『我が裁きは刃の断罪なり。悪意の罪は慈悲の余地はなし。悪魔の誘惑を受けた者は必ず処刑を執行する……』


 青年が詠唱している時に右腕が緑光に光り出し、回路のような紋章が浮かびこむ。

 使い魔ファミリア達は武器を振り下ろそうとすると、青年は拳を強く握って叫ぶ。


『罪を裁く正義と絶望の死にゆく悪夢を生み出せ! 回路起動コード・オン死にゆく悪夢デッド・オブ・ナイトメア!』


 青年は叫びながら腕を振り下ろす。

 すると拳から鎖が生み出され、鎖の先から包丁程度の刃を錬成されて使い魔ファミリア達が持つ武器を破壊する。

 その死にゆく悪夢デッド・オブ・ナイトメアが地面に刺さり、使い魔ファミリア達は破壊された武器を持ち直しながら後ずさる。

 青年は地面に刺さっている死にゆく悪夢デッド・オブ・ナイトメアを抜き取りながら、持ち手を肩に乗せる。死にゆく悪夢デッド・オブ・ナイトメアは肩に乗せると、縦三メートルと横五メートルぐらいの大きさになる。

 青年は死にゆく悪夢デッド・オブ・ナイトメアが大きくなるのを見て、懐から赤い手紙を男に投げ渡す。

 男は赤い手紙を読むと徐々に青ざめながら青年の方を見て叫ぶ。


「ま、まさか……! 貴様はあのブラッド・ホークなのか!?」

「ようやく気付いたのか? マァ……」


 青年は男が言う言葉を呆れながら死にゆく悪夢デッド・オブ・ナイトメアを向けて言う。


「お前の覚悟を示して見ろ」

 青年はドスが聞いた声で言うと、一気に距離を近づいて死にゆく悪夢デッド・オブ・ナイトメアを振り下ろす。

 男は慌てて使い魔ファミリア達に命令する。


「い、急いで俺を守れ!」

「「ハッ!」」


 使い魔ファミリア達は男の命令を聞いて男の前に立つ。しかし青年は気にせずに使い魔ファミリア達に向けて詠唱する。


『我は正義の剣、善の執行。されど悪の使いを倒す! 善は人を守りグドネス・プロテクツ・ピープル・アンド・悪を滅するデストロイズ・イービル!』

 青年は詠唱し終えると死にゆく悪夢デッド・オブ・ナイトメアの刃に回路のような紋章が浮かび上がり、使い魔ファミリアの肉体を野菜のように容易く両断する。

 使い魔達の体を両断して、傷口から赤い血が滝のように噴き出して倒れ込む。

 男はこの先の未来を嫌という程を察し、冷や汗を流しながらこの場に去ろうとする。

 しかし青年は死にゆく悪夢デッド・オブ・ナイトメアの鎖を掴みながら振り回し、男が付けている王冠に向けて詠唱する。


『我は絶望と無慈悲の刃を心身諸共叩きこむ、悪にとっては絶望そのもの。我が鎖は悪を打ち砕く! 絶望は希望を噛み砕くディスペア・デストロイ・ホープ!』


 青年は詠唱し終えると死にゆく悪夢デッド・オブ・ナイトメアの鎖に回路のような紋章が光り出し、鎖の先が竜の頭部になると勢いよく王冠に向けて投げ飛ばす。

 鎖の先が王冠に食らいついて、それを噛み砕くと同時に手元に戻る。

 男は王冠を破壊されて人の姿に戻り出す。青年は男が被っていた王冠の破片を見ながら呟く。


「これは……青銅之王冠アドラメレクのコピーか」


 青年は王冠の破片を投げ捨てて男に近づく。

 男はゆっくりやって来る青年に恐怖を感じ、怯えながら教会から去ろうとする。だが足が小鹿のように震えており、地面を這いずばっていると青年は死にゆく悪夢デッド・オブ・ナイトメアの刃を上空に投げて詠唱する。


『我は汝の首を狩るものなり。その刃が汝の首を刎ねようが、鎖で心臓を貫こうが、すべて因果応報である』

「ま、待て! いや、待ってください! この娘を殺そうとした理由や依頼主の名前を出します! なので――」


 男は必死に命乞いをするが、青年は男の命乞いを無視して刃を上げた腕を振り下ろして言う。


『汝の罰を執行する。死の執行デス・エクセキューション!』


 青年は詠唱し終えたと同時、上空から刃が落ちて行き、男は急いで逃げようとする。しかし鎖が男を束縛する上に棘を生やして動きを止める。

 男は全身に棘を刺されて悲鳴を上げようとするが、落ちてきた刃に首を刎ねられて死ぬ。

 男の首の傷から血が噴水のように吹き出し、青年は死にゆく悪夢デッド・オブ・ナイトメアを収め、少女の方に向かう。

 少女は先ほどの戦いを見て自分も殺されると思いながら目を瞑る。

 しかし痛みや熱を失う感覚を感じず、恐る恐る目を開けると青年が手をさしながら心配する。


「大丈夫か? 使い魔ファミリアの攻撃で傷口があると思うが……?」

 少女は青年の手を掴み上げながら答える。

「傷は少しかすっただけだから大丈夫だよ。でも、あなたは何者なの?」

「俺が何者か? そうだな……」


 青年は少し考えて、自分の名前を言う。


「俺の名前はキョウヤ。ブラッド・ホークに所属している日本人ヤマトジンだ」


 キョウヤと名乗った青年は自分の素性を言う。

 その時に曇りが晴れ、月光が壊れかけている教会の隙間から入る。光は二人を包み込み、ステンドグラス越しで幻想的に輝く。

 どうしてこのような事になったのは数時間前に遡る。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――と言うわけで新シリーズです。

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2024年11月30日 19:10
2024年12月1日 19:10
2024年12月2日 19:10

ブラッド・ホーク~復讐の名と言う血に染まった鷹の復讐譚~ 佐々牙嵯峨兎 @sasakisogato

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