第40話
幼馴染が日本にいる
声を絞り出し
言葉を紡ぐ
沙耶 北斗は…元気なんですね…
鶴田 はい。N.titleのメンバーとして活
躍しています。
沙耶 よかった…
鶴田 私も安心しました。
名前を聞いただけで涙するあなた
を見て、僕の行動は間違ってなか
ったと…
沙耶 鶴田さん…
飲み直すことにした
綺麗なシャンパンの泡が夜景と
僕達の出会いを祝福してくれた
沙耶 北斗はなぜ芸能界に?
そういうタイプじゃないのに…
鶴田 なぜって。すべてはあなたの為で
は?
沙耶 え…
鶴田 自分が有名になればきっと沙耶さん
が見つけてくれる。って信じていた
んではないでしょうか。
沙耶 私の…ために…
沙耶の表情が歪む
まだ高校生の北斗の顔が浮かんだのだろう
鶴田はソファに浅く座り直した
鶴田 北斗は今グループのピンチを救おう
としています。来年12月リリース予
定の映画主題歌に合わせたバラード
を模索しています。
沙耶 北斗が曲を書くということですか?
鶴田 はい。触れたがらなかったピアノに
デビューしてから触れるようになっ
たと聞いたことがあります。
沙耶 ピアノを避けていた理由は…
鶴田 ピアノを見るとあなたを思い出すか
らとメンバーの頼に酔った勢いで言
っていたそうです。
沙耶 私を避けていたのかな…
鶴田 それは違います。
あなたのことを想い過ぎて辛かっ
た。だから避けた。自分がズタズタ
に引き裂かれないように。自己防衛
です。あの頃の…
綺麗な記憶を忘れないように。そう
いうことだと思います。
沙耶 ご存知なんですね。
あの頃のわたしたちのこと。
鶴田 すみません。実はあなたに探偵をつ
けました。日本とニューヨーク
で…。今朝日本のものから連絡があ
りました。当時桜山の麓で暮らして
神童と呼ばれていたと。そしてあな
たは弊社の社長西村から直接スカウ
トされていたこと。そして何より
も…
鶴田 北斗とあなたがお互い想い合ってい
たことも…新聞記事、雑誌。すべて
読みました。探偵の調査であなたが
養子になったことも分かりました。
ご両親のことも。
沙耶 そっか…全部知ってるんですね。
鶴田 すみません。
沙耶 あやまらないでください。
鶴田 でも…なんと思われてもいい。
北斗を助けたい。メンバーの未来は北斗の曲で決まると言ってもいいんです。メンバーの頼が北斗に曲作りを命じたのは、北斗は彼らと違って本当の愛を知っているからなのだと思います。
沙耶 私が日本に行けば、北斗は救われる
んですか?今まであのときのことを思い出してほしくなくて探すことを諦めました。居ない方がいいと思って…日本を離れて…でもしばらくは毎日彼が夢に出て来て…会いたくて会いたくてどうしようもなかった…
鶴田 沙耶さん…
沙耶 ホテルマンをやめます。
鶴田 え…
沙耶 私、日本へ帰ります。
北斗に会いたい。
傍に居たい。
沙耶の決意は揺らがなかった
翌日、鶴田は沙耶を連れて西村の元へと
連れて行った
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