第18話
朝はチェックアウト
昼から夜はチェックイン業務に追われ
お昼を食べる暇すら与えられない
すこし落ち着いたあと
テイクアウトで購入したホットドッグを食べ
大きな丸テーブルでメールチェックを行う
目をまんまるくして見つめてくるのはジェシカ
イギリス産まれアメリカ育ちの都会っ子である
裕福な暮らしをしながらも自立しホテルマンをしている
ジェ お昼くらい仕事やめたら?
日本人って働き者よね
沙耶 17歳からずっとこっちなんですか
らもう馴染んでますって。
ジェ ホントかしら。見てるだけでも疲れ
るくらい働いてるわよ、あなたは。
沙耶 そうかな。楽しいからいいけど。
苦じゃないし。
ジェ それよりなんでここで働いてるの?
沙耶 なんでって?
ジェ ニューヨークで一番の大学を出てま
でやりたい?ホテルマンを
沙耶 あんたが言う?
学歴なんてただの履歴書に載るだけ
のこと。私がやりたいからやってる
の。
ジェ みんな医者や弁護士、税理士…それ
以外でも権力を持ちたがる。
沙耶 そうね。私には興味のない話。
ジェ このホテルはあなたのお母さんの好
きなホテルだったって言ってたわ
ね。
沙耶 うん。父と母の思い出の場所。
沙耶は18歳で東京の施設に入ったあとすぐに
ニューヨークやロサンゼルスに家を持つ日本人夫婦に見初められ養子になった
すでに60歳を迎えていた夫婦には子供がいなかった
容姿端麗で頭脳明晰な沙耶をこのままにしておくのはもったいないと引き取りを願い出たという
沙耶 父と母には感謝しています。
こんな私を大学まで出してくれて。
もう2人とも亡くなりましたけど
今でも愛しています。
ジェ あんたも大変ね。
沙耶 大変と思ったことはないですよ。
ただ…
ジェ ただ…??
沙耶 別れって慣れないなって。
ジェ 沙耶…
沙耶 あ!仕事に戻らないと!
ジェ ちょっと!!結局休憩してないじゃ
ない!だから日本人は真面目って言
われるのよ!
同僚のジェシカは優しさの塊だ
アジア人の私が就職活動の面接に来たとき
緊張する私に一番に声をかけてくれた
年齢も35歳で歳離れていることもあり、まるでお姉さんのように可愛がってくれている
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