第37話

その後、雄朝津間皇子おあさづまのおうじ物部椋垣もののべのくらかきと少し話しがしたいと言う事で、忍坂姫おしさかのひめはぶらりと宮の中を見てみたいと言った。


物部椋垣も相手が皇女だけに、駄目とは中々言えず、ご自由にして下さいと返事した。


それから忍坂姫は、宮の中を回った。一応事前に例の部屋がどこにあるかは雄朝津間皇子から教えて貰っていた。

いきなりその部屋に行こうとすると怪しまれるので、遠回りしながらその部屋へと向かった。


そしてついにそれらしき部屋を発見した。部屋の入り口には確かに彼女が鏡で見た土器が部屋の入り口の左右に置かれていた。


(鏡で見た土器と全く一緒だわ)


忍坂姫は周りに人がいない事を確認すると、さっと部屋の中に入った。

中は物置部屋のようで、色んな物が置かれてあった。


「さて、早く剣を探さないと。確か鏡では布に包まれていたわね」


忍坂姫は鏡で見た布が無いか急いで探した。すると部屋の隅の少し分かりづらい所に、それらしき物が置かれていた。

彼女は早速その布の中にあるものを見てみた。するとそこには変わった形の剣が包まれていた。


「やったわ。七支刀しちしとうがあった」


忍坂姫はこれで、物部伊莒弗もののべのいこふつの濡れ衣を証明出来ると思った。


「さてと、剣が見つかったので皇子に伝えないと」



忍坂姫は部屋の外に出ると、大きな声で叫んだ。


「いやー、誰かーー!!!」


雄朝津間皇子はこれが忍坂姫の合図だと思い、物部椋垣との会話を中断し、急いで忍坂姫の元に駆け寄った。


「忍坂姫、一体何があったんだ」


忍坂姫は雄朝津間皇子が来るなり、彼に飛びついた。


「雄朝津間皇子、この部屋の中から何か変な生き物の声がして……」


「バカだな、ネズミか何かだろう?」


2人がそんな演技をしていると、物部椋垣も遅れてやって来た。

だが彼の表情は少し険しくなったいた。


「あぁ、椋垣悪い。忍坂姫が部屋の中から変な生き物の声がしとか言うもんでね。多分ネズミか何かだろう」


雄朝津間皇子は、酷く怯えている忍坂姫を優しくなだめてやった。


すると忍坂姫は皇子に聞こえるぐらいな小さな声で、七支刀が部屋のどこにあったかを伝えた。


「本当に仕方ないな~じゃあ俺がちょっと中を見てくるよ」


そう言って、雄朝津間皇子は部屋の中へと入っていった。

そして忍坂姫から言われた所に、確かに七支刀が置かれていた。

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