第52話
「
佐由良は急に瑞歯別皇子に呼ばれて、皇子の部屋にやって来た。
「佐由良か、中に入れ」
皇子にそう言われ、「では、失礼します」と言って彼女は中に入った。
するとそこには瑞歯別皇子と一緒に若い少年が1人座っていた。
見た目で言うと10歳前後ぐらいだろうか。
(一体誰だろう?)
「瑞歯別皇子、こちらの方は……」
「弟の
瑞歯別皇子は素っ気なく答えた。
「こ、これは雄朝津間皇子。大変失礼しました」
佐由良は慌てて頭を下げた。
「あ、僕は全然気にしてないから良いよ。それより顔を上げてちょうだい」
そう言われて佐由良は顔を上げた。
(この子が、あの噂の雄朝津間皇子……)
雄朝津間皇子はニコニコしながら、彼女を見ていた。
他の兄達と比べてとても若い為か、どっちからと言うと可愛らしいと言う印象だった。
「急に呼び出してごめんなさい。
どうしても僕、吉備のお姫さまを見てみたくて。何でも兄上を体を張って守ってくれたんだって。本当にありがとう」
それは前回の瑞歯別皇子の暗殺計画の事だろう。
「そんな、あれは私にも落ち度がありましたし、逆に瑞歯別皇子にも迷惑を掛けてしまいました」
佐由良はふとその時の事を思い返した。
あの事件は確かに怖い出来事で、自分も重症を負う羽目になってしまった。
ただあの時はどうしてか、瑞歯別皇子を助けたいと強く思ったのだ。
もしかすると、
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