第360話
今、この会長室にはキリと俺しか居ない。
だから俺は横柄な態度でデスクの上に脚を乗せ腕を組んだ。
「で、俺は花嫁を新郎(この場合鴇田)に手渡す。そのとき涙を浮かべてだな」
と、バーチャルしてると
キリは声を挙げて笑い出した。
「会長が涙?私たちの結婚式で?」とからかわれて
「何だよ、オキマリだろ」と、ふん、と言ってやり
「あいつには―――
鴇田には幸せになって欲しい」
そう続けると
「私との結婚でそれが築けると?」
「だといいがな」
口元に笑みを浮かべると、キリはゆっくりとメガネを取り去った。
それをスーツのV字に開いているカットソーの胸元に掛けると、これまた色っぽく俺のデスクに腰掛け、脚を組んだ。
唯一良かったのは、パンツスーツだったことだな。スカートだったら危うく中が見える所だったぜ。まぁ見たところで欲情は……『しない』とハッキリとは言い切れいない俺、どうなの。
俺とキリが向き合う形になって、俺が目だけを上げると
「貴方にはそれを見届ける義務がある―――」
キリは身を乗り出して、俺の顎のラインをそっとなぞった。
「スペシャルドリンクで殺されなきゃ、な」とぞんざいに言って、キリの指を払うと、キリは俺のネクタイの端を握り、突如として引き寄せられた。
「会長―――、一つだけお聞きしたいことが」
キリが低く言い、「何だ」俺は無表情で聞いた。それが人に物を聞く態度か、と心の中でツッコみながら、でもその言葉は口から出なかった。
何故か、物を言わせない力強い光がキリの黒い眼の中で渦巻いているのを見て、怯んだワケではないが、口出しできない何かを感じた。
「私は“玄蛇”の生き残り。
“スネーク”の妹よ?
ねぇ教えて。
血より濃い絆って存在するのかしら」
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