第11話

IFストーリー:イズとリルの日常


※イズ&リルの話を書きたかったので書きます!本編とは関係ないので気軽に読んでください~(ただしルイ&リズより物騒(自殺行為の表現も含みます)かもしれないので、苦手な方はご遠慮ください)


「………。」

年端のいかない少年は、ジーッと扉の隙間から中の様子を伺っていた。

手にはメモ帳とペンを持って。

彼は今、真剣に覗いていた。そこへーー。

「…何してるのかしら、イズ♡」

「うっうわあああああ!?」

突如、真後ろから聞こえた弾んだ声に、イズと言われた少年は肩をビクッとさせた。

拍子に手からメモ帳とペンが滑り落ちた。

心臓がいまだドキドキしている。

「…な、なんだ。リルか。驚かせないでよ」

そういいつつも、大好きな妹が構ってくれたこと、しかも真後ろに立っていたことに対してなんだかんだ喜んでいた。

「あら、大大大大~好きな妹にそんなこと言っちゃうの?兄様ったらひどいのね。この縄で亀甲縛りにして、炙っちゃおうかしら?」

「えぇっ!!?な、縄で縛るのは良いけど、炙るのはだめだよ!死んじゃうよ!」

イズは今にも縛りかねない(というかもう半分は縛られた)リルに、必死に断る。

しかし、リルは特に気にする様子はないどころか、とんでもないことまで言い始めた。

「え?いいじゃない♡イズ兄様は死体になってもとってもすてきよ!むしろ、そっちの方がきれいだったりして…!」

うっとりとした口調で、とんだサイコ発言をぶっ放す。

その瞬間、イズはガーンっとショックを受けた。

「…リルは生きてる僕より死んでた方が好きなんだ…あぁ、でも好きなのは僕だけ…うぅ、死んだら好きになってくれるかな?でもそうしたらリルを見れなくなっちゃう…」

ブツブツと独り言を呟きながら、自身の手首に『Myカッター』を突き付ける。

当然、イズの手首からは血が流れた。

その様子を助けようともせずに、

「うふふ、イズの血もすてき。リルの血を混ぜたらイズはずうっと私のものね」

と眺めるリル。

状況はカオスである。

「そこで何してるの?イズ、リル」

「お母さま!」

そこへ、扉の向こうにいたお母さま…リズが顔を出した。

頬が少し赤いのは、父であるルイといちゃいちゃしていたからであろう。

イズが見ていたのはそれであった。

日々、リルに好きになってもらうためにこっそり勉強しているのだ。

「イズがいたから、脅かしたのよ。でも今はカッターで遊んでるわ」

何てことないように、さらっと状況を伝えるリル。

リスカを”遊んでいる”と表現できるのは、リルだからかもしれない。

「もー!イズったら、お父さんみたいなことして~(あれは脅しだけど…)それはお部屋でやりなさい。リルはこれからピアノの時間でしょ?早く行きなさい!」

「…はぁい。んじゃあね、イズ兄様♡」

「…じゃ、じゃあねリル…あぁ、またリルは僕を置いていくんだ…」

ラフにリズは伝えると、リルは渋々戻った。

イズはまだ、メンヘラっている。

放っておくと死にかねない。

「…イズ、リルに構ってもらう方法、教えてあげよっか?」

だから切る手を止めなさい、と見かねたように微笑むリズ。

「…!そんな方法、あるの?」

その言葉に、イズはようやく手を止めた。

リズは今のうちに血がだくだくと流れる手に、包帯を巻きつける。

「もちろん~!私もたまーにルイくーー…お父さまに嫉妬してほしくてやってるもの♡」

(いつかのお茶会、あの時話したことも本心だけど、半分以上は嫉妬して欲しくてやった計算、なんて言ったら怒るかしら…!まあ、ルイくんだもの、いっか!)


そのころ、部屋の中のルイとハンスくん。

「…くしゅんっ!…ふふ、リズが俺の噂をしてるみたい…♡」

(…今日もやべぇ…)


「えぇ!?あんなに愛してもらってらぶらぶなのに!?」

信じられないという様子で、イズの声は高くなった。

イズは良くこっそり二人を見ているが、ルイは一日中リズにべったりだ。

時には、リズと話す子供たち(僕たち)にさえ嫉妬する始末。

良くハンスが遠い目をしている。

ちなみにハンスは、結婚した。

町に住んでいる花屋の幼なじみらしい。

元から付き合ってたけど、城に就職が決まって大忙し。

なかなか結婚まで進まなかった。

けれど、お母さまの結婚式でとても仕事を頑張ったらしく、お母さまの働きで休暇を与えられたのだとか。

その間に、無事結婚。

「今はあの方のようにはならないように頑張ってます…俺は普通の愛を嫁にあげたいんで…」

と、僕にこっそり教えてくれた。

でも運悪くそれをリルが聞き、お父さまに話し、長時間いびられ続けたのは、さすがにちょっとかわいそうだった。

…と、今の話に戻そう。

「ふふっ!わざとして愛を確かめるのがいいの♡それより~…ごにょごにょごにょ…」

「……!それで…う、ちょっとやりたくないけど、リルが僕を見てくれないから…」

お母さまは、耳元で秘訣を教えてくれた。

想像していた五倍ほど、簡単だったけど…果たしてこれはリルに聞くのか。

それは、試してからのお楽しみだ。

「ありがと、お母さま。僕、早速試してみるね」

「えぇ!頑張ってね!」

イズは廊下を駆け出した。


           ***


その日の午後。

「…イーズ!やっと昼になったわね~!あのピアノの先生ったら私が反論したらすぐ授業終えちゃうんですもの。おかげでウルテ語の…」

そこまで話して、リルはイズが話をちゃんと聞いてないことに気づく。

「………。」

リルは、無言で壁際までリルを追い込む。

「…リ、ル…!そ、そんな怖い顔しないで…。…う、うわっ…!」

リルの圧に押され、一歩ずつ後ろへ下がったイズだったが、とうとうしりもちをついてしまった。

「…ふーーーん…いつもは構わないと泣く癖に、無視なんていい度胸ねぇ♡やっぱり解剖(ばら)してホルマリン漬けにしたほうが可愛げがあるかしら??」

声はいつも通りだが、目は完全に笑っていない。

「…リル…!お、怒らないで!また見捨てないで…!!話す、話すからぁ…」

イズは泣きべそをかきながら、隠したあるものを出す。

あるもの。

それはメイド達とお風呂に入っている写真だった。

それは、たまたまリルとも一緒に入れず、水と間違え酒を飲み、酔っぱらってメイド達の入る風呂に突入した時の写真である。

本当に、本当に、たまたま。

怪しい言い訳にも聞こえるが、事実なのでしょうがない。

「……兄様?リルに隠してそんなこと、してたの?イズ兄様ったら、どうしようもない愚者だこと」

目から完全にハイライトが消えた。

「リル…!ごっごめんなさい!!ごめんなさい!!ゆ、許して…!それは誤解で、」

ヒステリックになりながら謝るイズの口を、リルは頬を掴んで止める。

体勢は馬乗りになり、嫌われまいと必死な泣き顔が上から良く見える。

状況に少し、ゾクッとしながらも、語り掛ける。

「黙って?そんなことは分かってるわ。リルが怒ってるのは、リルのこと一番大好きなくせになーんで、こんなことしてるのかしらって♡」

こんなこと。

それは写真のことではない。

なぜこんな、分かりやすい嫉妬させようとすることをしようとしているのかだ。

リルはイズの首を絞める。

話せる程度には、ゆるくして。

それでも、決して妥協はせず。

「…んくッ…!だ、だって…リルが…僕のこと見てくれない…から…」

「……えっ」

予想外の答えに、リルは固まった。

拍子に、首を絞める手が緩んだ。

ゲホッゴホッ…!と、せき込む音が聞こえる。

「…驚いたわ、まさかリルのイズ兄様への愛が伝わってなかったなんて。どうしたらわかってくださるのかしら!?」

好奇心あるまなざしをリルは向けた。

「…キ、キスとか…行動で示すもの…してくれたら…」

「分かったわ!」

「………えっ!!?」

すぐに了承が得られ、イズは驚きが隠せない。

だが、リルはそれを気にすることなく、分かった、と言ったと同時に自身の手首を切った。

ある意味、二つのことでイズは驚愕。

リルは、驚いて固まるイズを無視して、血の流れる手でイズの手に巻かれた包帯を取る。

少し前までも切っていたのだろうか。

まだ血が滲んでいる。

リルは、にんまりとマッドな笑みを浮かべると、イズの傷口をぺろりと舐めた。

「…リ、リル…」

「なぁに?イズ。…ほら、兄様も舐めて」

しばらくイズは戸惑っていたが、腕を差し出され、同じく舐めた。

鉄の匂いと味がした。

切った直後なので、まだ温かい。

「……上出来♡」

リルは満足そうに言い、それからキスをした。

お互い血を舐めたからか、ほんのり血の味がする。

「お互いの血が混じった…!これでリル達、永遠に結ばれたわね…!ふふ、死んでも一緒♡」

「リルが僕のこと好きって…僕も好き…大好き!!これでリルは僕しか見なくなる…」

人が来て騒がしくなるまで、イズ達は自分の妄想に浸っていたのであった…。


            ***


「…ねぇ、聞いた?先日イズ王子とお風呂に入った子達、しばらくお休みですって。何の前触れもなく、顔も見せずに言うんだもの。どうしたのかしら?」

「リルさまじゃない?あの方、何考えていらっしゃるか、時々分からないもの…。そういえば、リズさまがリルさまとしばらく距離を取ってるのよ、不思議よね~」

数日後。

メイド達の間で、そんな噂が広まった。

メイドとリズになにがあったのか…それは、皆様のご想像にお任せします…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る