第24話


中瀬 灯理は久保田が指摘した通り、格好や化粧は地味目だったが、それなりの格好や化粧をすればかなりな美人になるに違いない。



「大和撫子って言うタイプですかね?イマドキじゃちょっと珍しいしとやかな……奥ゆかしいって言えば聞こえがいいっすけど」と久保田がメモに視線を落としたまま呟き、



なるほど、その言葉がしっくりくる。と納得した。



「でも地味は地味すよ」と久保田は言い切る。「あのタイプは片岡 陽菜紀の引き立て役に利用されてた、って言われたら納得ですけどね。それが嫌になって…」



「殺したって言うのか?」



中瀬 灯理は単にお嬢様気質と言うわけでもない。俺の質問にも丁寧な口調で受け答えをしたし、しっかりと自信の持てるところはハッキリと言い切る。かと言って曖昧なところは格好をつけず、『分からない』と言った。



一見流されそうではあるが、頭の回転は速く、芯はしっかりしているタイプだ。



「中瀬 灯理と片岡 陽菜紀の間にトラブルは?」一応、久保田に聞くと



「他の班が彼女たちの同級生に聞き込みした結果、これといって無かったようです。喧嘩をしているところもみたこともない、と。



まぁ実際の所分からないっすけどね。一方は派手とも言える華やかな生活で、一方は暗く地味な暮らしぶり。同じ年齢だしましてや同性だとやっかみとかもあったんじゃないですか」



やっかみ……かぁ。直感だが、その線は薄い。中瀬 灯理は片岡 陽菜紀に妬みを抱いていたようには思えなかった。心の底から片岡の死に驚き、また悲しんでいるようにも見えた。



「片岡 陽菜紀のマンションにあった高価な貴金属類はみな無事。強盗の線も薄いですし、強盗だったらわざわざあんなセキュリティの高いマンション狙わないでしょうね。一応全ての監視カメラを鑑識に回しましたが、パッと見怪しい人物が出入りしてた様子も見れないです。



かと言って、単なる怨恨じゃないッスよね」



久保田が手帳をパタンと閉じ、目を細めた。



「実のところ俺もそう思ってる」





この事件は20XX年―――今から七年前に起こった“L”事件と関連性が高い。



今回、片岡 陽菜紀の殺害現場の三面鏡に彼女の血液で描かれていた“L★”の文字。



七年前から連続して起こっている婦女殺害事件を連想させる。





だが解せない何かはある。



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