第29話


「おはよ♪朔羅ちゃん……こいつは?」



キモ金髪野郎はあたしの隣で歩いているメガネをちょっと不審そうにじろりと見た。



って言うか馴れ馴れしく名前呼ぶなよ。



「クラスメイト。そこで一緒になったんです」



あたしは目一杯の愛想笑いを浮かべた。



「朔羅ちゃんの彼氏?」



「まさか!ただのクラスメイトです」



メガネはちょっと眉をぴくりと動かしただけで、何も言わなかった。



何も言うなよ。ってオーラをあたしが出してたからかな。



「そっか。ま、いいや。ところで朔羅ちゃん、いつになったら俺と付き合ってくれるの?



俺、朔羅ちゃんを退屈させないよ?」



いや、退屈とかそういう問題じゃねぇって……



「気持ちはありがたいんですが、あたし……好きな人がいるんで…」



これはホントのことだ。



「でも付き合ってないんだろ?長いじゃん、片思い。相手にされてないって。そんな薄情な奴忘れて俺にしとけよ」



うっさい!あんたに言われなくてもわかってるっつーの。



あたしの好きな人は、



こんなキモ金髪野郎やメガネよりも、もっとずっと大人で優しくて、強い人。



手が届かないなんて分かってる。









「相手にされてないって、何であなたに分かるんですか?」




あたしとキモ金髪野郎の会話を黙って聞いていたメガネがのんびりと口を開いた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る