第2話

「この映画、好きなんですか?」



少女が『こんばんは』以外に掛けてきた質問に



「いや、別に……ただ…」



言いかけて言葉は再び呑み込まれる。



「ただ?」少女が後を引き継ぎ、僕の次の言葉を待っているようだった。







「ただ、人を待っているんだ」






僕の今日一番のはっきりした答えに少女は目をまばたき、



「待ち合わせですか?」との質問に、僕はまたもはっきりと頷いた。



「そう……」少女は静かに納得して、僕と同じように前を向く。映画のスクリーンは予告が終わってオープニングに入ろうとしていた。



「これ、どんな映画なんですか?」



少女に聞かれて「さぁ」と僕は答えた。映画の内容なんて僕には意味がないものだ。ただこの場所が、この席が―――唯一僕と彼女との約束を結ぶところだから。



オープニングがはじまり緩やかなBGMが流れ始めたとき



「私、この映画知ってる気がする。確か、幼い中学生が“約束”を交わすんです。



確か女の子だったか男の子だったか……が、転校になっちゃって」



「男の子だよ」



僕ははっきり答えた。さっきは知らない素振りを見せたが。



「そう、男の子だった。確か海外に行っちゃうって……幼い二人のカップルは、駆け落ちするつもりで、最後のデートにここを選んで……」



女の子の後を僕が続けた。



「いつか……五年後、十年後……三十年後だっていい。あのときの映画の半券を持ってここで再会しよう、と」







「そのひととは逢えましたか?」



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