第34話


そんな考えに浸っているうちに、勝敗は決したらしく、環が床に膝をついて荒い息を繰り返している。

悔しそうに右手の拳を床に叩きつけて顔を顰める。


そこへ。



「……ッ礼奈ちゃん!!!」



駆け込んで来たのは残りの生徒会メンバー。


……ほら、面倒臭い。

会長の発言で全員来ていることには気がついていた。


とっても心配させちゃったみたいだけど、私は何とも無い。

寧ろ楽しんでいたのだけど…。



「ハッ、全員集合かよ…。うちの奴らだって強いんだぜ?」



何故か楽しげに環は笑う。


そんな事はいいんだけど……。

……ん?



「……あ!解けた♪」



手首のネクタイ解けたわ。

やっと手が自由だよ!!

やったね♪

動きやすさが段違い。



「……何気にお前が一番余裕そうだな、礼奈?」



場違いな声を発した私を環は呆れたように見つめて苦笑する。



「…そう?」



そういうつもりは無かったのだけど。



「普通眼の前で殴り合いなんか見せられたら、怖がるもんだろう?」

「そうなの?別に怖くは無かったけど……」



今のは所詮は喧嘩でしょう?

本気で殴り合っていたけれど、死人が出るわけでもなし。

悪くて骨折くらいでしょう?

勿論最悪が起こることもあるだろうけど、会長と環に限ってはそんな事は起きない。

二人とも実力はあるから、そういう手加減はする。


…怖がったほうが良かったかしら?



「……そうか」

「あ、環〜、ファスナー上げて?」



自分でワンピースの背中のファスナーを上げるのが面倒臭いなり、くるりと後ろを向く。



「……はいはい」



痛めた身体を億劫そうに近寄って来て、ファスナーを上げてくれる。



「ありがとう」

「…そういえば、あの時何であんな事言ったんだ?」

「え?なんのこと?」

「俺がお前を抱けないって」



ああ、その事。



「だって、事実抱く気なんて無かったでしょう?」

「……本気だったら?」

「金的蹴りしてたわよ?」



ちゃんとそれくらいの身動きは出来るように、気を抜いてはいなかったからね。

男性の急所でしょ?

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