第67話

――いや、別にそこまではしていらんだろう、右京先輩は間宮にベタ惚れなんだから。



と、天野が言おうかどうか悩んでいると、



「はい! 是非お願いします、師匠!」



目の前の美紅は、川上の右手を両手でがっしりと掴んで頭を下げている。



「落ち着け、間宮。川上先輩も受験生なんだぞ」



「あっ、そっか……」



天野は何とかして美紅をたしなめようとしたが、



「ありがとう、すみれちゃん。でも私、ウェディングプランナーの専門学校に推薦で願書出して、もう合格通知ももらってるから」



川上は優しげな笑みを天野へと向けた。



「ウェディングプランナー!? カッコイイです!」



美紅のキラキラと輝く目を見て、川上はふふっと優しく微笑む。



「美紅ちゃんが結婚する時も、私にお式の担当させてね」



「えっ。私……」



右京とのことで悩んでいる真っ最中の美紅は目を伏せ、



「市川くんのこと、美紅ちゃんのお色気でメロメロにしようね!」



川上は悪魔のような妖艶な微笑みを浮かべた。



(わー……この人、絶対に右京先輩で遊んで楽しむ気だ)



天野はそう思ったが、彼が過去に彼女にしてきたことを思えば仕方がない気もしたので、何も言えなかった。

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