お色気大作戦

第65話

学校内のお祭りムードもすっかりと落ち着き、いつも通りの日常に戻ってきたなと感じるようになった頃。



「むー……」



学校からの帰り道に寄ったカフェの店内、そのソファー席に座った美紅が、不服そうに頬を膨らませた。



そんな美紅の向かいの席に座っているのは、



「今度は何なの?」



今日はアルバイトが休みな天野。



二人でケーキセットを注文し、美紅はモンブランを、天野は苺のミルフィーユを食べる。



今日は、右京に送ってもらうのはあらかじめ断りを入れてある。



その時の右京の返事は、



「……そっか」



という、どこか上の空気味で、冷たい印象を持ってしまうようなものだったけれど。



付き合っているからといって、絶対に一緒に帰らなければならない決まりなんてないし、それは別に構わないのだけれど。



「右京くんが、また私と距離を置くようになっちゃって」



初めてキスをされた時にのように、右京はまた美紅を遠ざけるようになっていた。



遠ざける、とは言っても、毎日の登下校は一緒だし、休み時間に会いに来てくれるのも相変わらず。



ただ……美紅と密室で二人きりになるのを避けたがるようになったのだ。



「私が貧乳な上に下手くそだから、もう女として見られなくなっちゃったのかな……」



思いも寄らぬ美紅の発言に、



「ぶっ……!」



ミルフィーユを食べていた天野の口から苺が飛び出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る