第57話

「右京くん、おはよ。朝ごはん作ってくれてありがと」



右京の心境になど全く気付いていない美紅は、嬉しそうに右京の胸へと飛び込んでくる。



「――!?」



右京、赤面しながらただただパニックに。



「みみみ、美紅! 頼むから、せめて下は穿いてくれ!」



美紅の肩を両手で掴んでから押すようにして引き剥がし、一歩後ずさりして距離を置く。



「下?」



美紅は不思議そうに自分の下半身を見下ろして、



「えっ……」



寝ぼけ眼が一気に大きく見開かれて、



「きゃーっ!」



右京のスウェットの上から太ももの辺りを両手で押さえ、大慌ててリビングから出ていった。



まだ湯気の立っている朝食が並べられているテーブルの傍に立ち尽くしていた右京は、



「もしかして……知らなかった、のか?」



テーブルの足元にヘナヘナと座り込み、



「はぁーっ」



緊張と羞恥心から解放されて、深い溜息をついた。



その後、無事に自分のパジャマへと着替えた美紅が戻ってきたが、



「……」



「……」



双方、恥ずかしくて気まずくて、食事中は何も話すことが出来なかった。

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