第54話

二人分の衣服が床に散らばっている薄暗い部屋の中、そのベッドの上では、



「……あっ……!」



「美紅……可愛い」



右京に組み敷かれた美紅が、彼が腰を深く沈める度に声を漏らし、そのまなじりから涙の粒を流す。



「……まだ痛い?」



右京の酷く心配そうな声に、



「んっ……少し。でも、すっごく幸せ」



美紅は相変わらず涙を流しながらも、幸せそうに微笑んだ。



「……っ、ダメだ。可愛すぎる!」



「やっ、待って! ……あ――っ!」



美紅の甲高いき声と、右京の幸せそうな艶っぽい吐息が重なって聞こえて――



涙を流したまま、気を失うようにして眠ってしまった美紅を、



「美紅……愛してるぞ」



右京が気だるい体に鞭を打ちながら、愛おしそうに抱き締めた。



その声が美紅に届かなくても、伝わらなくても別に構わない。



右京はただただ、



「美紅の全部が、大好きだ」



溢れ出てきて止まない感情を、口からだだ漏れさせていた。

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